こんにちは!malcoです。
映画「スパイの妻」が、dtvで見放題になってたので観てみました。
今回はネタバレなしのあらすじと感想の後に、ネタバレ感想も書きました。
作品を視聴済みの方は、ぜひお読みいただければと思います!
ネタバレなしあらすじ
舞台は第二次世界大戦直前の神戸です。主人公は福原聡子(蒼井優)。貿易会社を営む福原優作(高橋一生)の妻として、何不自由ない生活を送っています。
福原家は職業柄、輸入品を多く生活に取り入れ、洋風の生活形態を貫いていました。聡子の幼馴染である陸軍憲兵の泰治(東出昌大)は優作の素行を快く思っておらず、幾度となく聡子に警告していたのでした。
そんな中、優作は甥であり自社の社員でもある文雄(坂東龍汰)を連れて満州に渡ります。予定よりも帰国を遅らせた優作は、満州からある女性を連れ帰りました。その後、その女性は何者かに殺されてしまいます。優作は何か隠し事をしている様子。文雄は帰国後しばらくして会社を辞めてしまい、有馬の旅館に引きこもって別人のように変貌していきます。
愛する夫を信じたい聡子でしたが、次第に不信感を募らせていき…というストーリーです。
映画「スパイの妻」とは
黒沢清監督の作品です。2020年にNHKのテレビドラマとして制作され、その後、劇場用に調整されて映画として公開されました。
第77回ヴェネツィア国際映画祭に出品され、コンペティション部門銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞。その他にも多くの賞を受賞している作品です。
ネタバレなし感想
キャスティング的にダブル主演のように感じるのですが、ストーリーが進んでいくと聡子が主人公なのだと分かります。
何が凄いって、聡子役の蒼井優さんの演技が凄いです。
こんな言い方をすると他のキャストの皆さんに失礼かもしれませんが、彼女一人だけ本物の昭和の人のようです。
話し方も表情も仕草も。
昭和中期ぐらいの女優さんて、今の作品を見慣れている私たちにとっては、けっこう特徴的に見えるじゃないですか。
そんな昔の映画を見ているかのような錯覚に陥りました。
聡子が「お見事!」と言って倒れるシーンがあるんですけど。
あのシーンがめっちゃ好きでした。
あの言葉を、そのまま蒼井優さんにお返ししたいなと思いました。
あ、もちろん他のキャストの皆さんも素晴らしいんですよ。そこは勘違いされませんように。
全体の雰囲気としては、開戦間近なだけあってかなり暗いです。
スパイがカッコ良く暗躍するようなエンターテイメント作品ではありません。
見るのが辛くなるようなシーンもありました。
観終わってスッキリするものは、何もありません。
謎だらけで、どう考えたらいいのか分からないという感覚が強いです。
タイトルにある「スパイ」というのが何を指すのか…。
観終わった後に随分と考えなければいけませんでした。
終わってから「ワケがわからない!」と感じる人もいるんじゃないかな。
解釈が難しくていろいろ考えたので、その事もネタバレあり感想として書こうと思います。
※この先はネタバレを含む感想になります。
ネタバレ厳禁の方は、こちらで記事終了となります。映画観賞後に、ネタバレあり感想も読んでいただけたら幸いです。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。
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ネタバレあり感想
いや〜。難しい映画でした。そしてズッシリ心が重たくなりました。
文雄の拷問シーンは見てられませんでしたよ。
ちょっと吐き気がしました。
さて、ラストの解釈ですが。
ものすご〜く、いろんな解釈ができる結末でした。
国家機密を持ち帰った優作が、アメリカに機密文書を渡すために渡米するという展開。
その行為自体がスパイ行為であり、聡子はスパイ行為をする優作の妻だから「スパイの妻」というタイトルの作品なのだと、単純に考えればそうなりますね。
結末としては、聡子が持たされたフィルムは機密情報を映したものではなく、自主制作映画にすり替えられていました。
聡子は完全に優作に騙されていたワケです。
優作が聡子を騙していたのは、いつからだったのか…。
アメリカ行きを決断して、二手に分かれようと言い出したあたりからだと考えるのが自然かなと思います。
その場合、優作は聡子を本当のスパイにしてしまわないように連れて行かなかったとも考えられますし、文雄を憲兵に売った聡子を優作が見限ったとも考えられます。
しかし私は、優作が聡子を騙していたのは、一番最初からなのではないかと思いました。
つまり優作は映画が始まるずっと前から、スパイだったのだろうと。
思えば、怪しいと思うシーンは何度かありました。
自主制作映画の撮影で、聡子に何度も金庫を開けさせていたのも怪しい。
「金庫の番号は?」「もう覚えました」なんてわざわざ確認してみたり。
聡子には見せたくなさそうな文書を、聡子の目の前でその金庫に入れたり。
英国商人ドラモンドとのやり取りだって本当かどうか。
スパイ仲間である可能性もあります。
密告さえしなければ、あのまま夫婦でアメリカに渡ることもできただろうに。
優作の裏切りは、彼が安全にアメリカに渡るために聡子を利用したように見えました。
本物のスパイならば、一緒にアメリカに渡ったところで聡子の処遇に困るだけでしょうから、置いていくというのも頷けます。
そもそも最初から、聡子→優作という愛情のベクトルは感じられても、優作→聡子というのは感じられませんでした。
聡子が憲兵である泰治の幼馴染というところに目をつけて、近付いたのではないかとすら思えます。
優作の手のひら返しは、そのくらい手酷い仕打ちに感じました。
それに、戦争が迫った時世の中で様々な人たちが狂気を見せていく中、優作だけが終始冷静で、正義の人のように描かれていたのも気になるところ。
そこには周りの人間を信用させて利用し、目的を果たそうとしているという裏があり、実は一番の冷徹人間だったと捉える方が面白いような気もしました。
しかしながら、どう答えを出しても何かしらのモヤモヤが残りますね。
あえて視聴者の思考回路を、グルグルと迷宮入りさせるような作りにしてあるのかもしれません。
そういう意味で、忘れられない作品になりそうです。
うーん。お見事…。
まとめ
非常に解釈が難しい作品としか言えません。
観た人の数だけ解釈が存在しそうです。
蒼井優さんの演技がとても印象的でした。
終盤の聡子は、優作と一緒にスパイ活動をしているつもりで楽しそうでしたが、最終的には優作に裏切られてしまい、優作と同じ「スパイ」にはなれず「スパイの妻」のまま。
そんなところが皮肉で、洒落が効いているなと思いました。
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